全国初適用、集団強姦罪 検察が“リーダ格”に懲役8年を求刑

 早大生などをメンバーとしたイベントサークル「スーパーフリー」による集団婦女暴行事件を機に、改正刑法で新設され集団強姦罪は、今年1月1日に施行した。この容疑で全国初の逮捕となったのが、1月5日早朝、発生した事件。

 暴力団組員の宮丸克也、型枠大工の眞野卓、暴力団組員の吉岡審哉の3容疑者は、同日、少女をラブホテルSに連れ込み強姦、さらに現場にいた被害者の友人女性を強姦しようとしたとして、現場に駆け付けた警察官に現行犯逮捕された。

 この事件の初公判は3月11日に開かれた。検察官は冒頭陳述で次のように指摘した。

 「3被告は今年1月5日午前4時5分頃、知人を通じて紹介された少女2人に対し、駐車中の車内で『究極の選択だ。殴ってやられるか、開き直ってやらせるか』『ソープ(ランド)で働くか』『AVに出るか』『お前は輪してやる』」などと脅し、吉岡被告が運転する日産シーマで少女をホテルに連れ込み強姦、さらにもう1人の少女を全裸にして強姦しようとしたが、少女が車中で友人に『レイプされる』とメールをしていたため、現場に駈け付けた警官に現行犯逮捕された」

 一方、宮丸、眞野の両被告は集団強姦、集団強姦未遂を否認。自身が所有する車で被害者をラブホテルに連れて行った吉岡被告も集団強姦幇助と集団強姦未遂幇助を否認した。

 第2回公判では被害者の元交際相手で眞野被告の知人でもあるW証人が出廷した。W証人は、事件の前日夕方、行動を共にしていた真野被告から「遊べる女性を紹介してほしい」との申し出に応え、被害者女性の勤務が終了する5日午前零時すぎに会うことを約束。被害者女性から連絡のあった午前3時頃、被告らと共に女性の自宅まで迎えに行ったと証言した。

 第7回公判は9月27日午前10時から開かれたものの、検察側の書面が整わず、10時8分に休廷した。およそ25分後、検察官は「進行を遅らせて申し訳ありません」と前置きし、論告求刑を始めた。

 検察官は「(被害者である)A、Bの供述内容は、極めて詳細かつ具体的で信用性は十分。警察官が臨場していなければ、(眞野と性交したAばかりでなく)Bも強姦されていた。被告3名の弁解は全く信用できない。吉岡が所有するシーマのダッシュボードからは覚醒剤の入ったビニール袋が発見され、ビニール袋からは吉岡の右手中指の指紋が検出された。吉岡は車を知人に貸していたと言うが、相手を明らかにしていない。宮丸は自動2輪の窃盗や監禁傷害を犯しており、再犯の恐れは極めて高い」などと断罪。

 最年長で主導的な役割を果たしたとする宮丸被告(25)に懲役8年、眞野被告(22)に同5年、吉岡被告(23)に同4年を求刑した。

 一方、3被告の弁護人は、最終弁論でそれぞれ次のように述べた。

 「宮丸は脅迫を用いて性交する意思はなかったため、強姦罪は成立しない。被告は被害者が(車中やラブホテルで)知人に送信したメールを黙認しており、強いて姦淫するつもりならば、こうした行為を阻止していたはずだ」

 「眞野がBと(ラブホテルの浴室で)セックスした事実は争わないが、女性2人の証言には変遷があり、信用できない部分がある。女性は風俗店で働いており、もう1人もそれに類する仕事をしていた。当時、被告人はシンナーを吸っており、女性はその服装から暴力団員もしくはそれに近い人物と認識したにも関わらず、車に乗った。Aは『助けて、輪される』と知人にメールしているが、その1分前には『Bの家に行こう』とメールしている。強姦されるような畏怖した状態ではなかった。Bは自らホテルに行こうと(被告)に述べ、ホテルの選定をした。女性がよく知っているホテルに(被告が)案内されることは、強姦をする上で極めてリスキーなことだ。これから強姦に及ぶとすれば、被告は犯罪の発覚を恐れ、女性のそれらの発言を止めているはずだが、黙認していた。女性たちはホテルの冷蔵庫からジュースを出して飲んでおり、(被告を)畏怖していた状況にない。本件は集団強姦や集団強姦未遂が成立する状況にあったとは言い難い。弁護人は眞野が無罪であると確信する」

 「被告人の吉岡は、正犯とされる宮丸、眞野、被害者の4人が(事件当時)車に乗って来なかったため、自動車を運転しなければならない立場にあった。しかし、運転を自ら買って出たわけではない。ホテルを指定したのは被害者のBであり、吉岡が被害者の嫌がる場所に連れていったのではない。ホテルに向ったことは、被害者の意見を尊重したためであり、集団強姦や集団強姦未遂の幇助には当たらず、無罪。覚醒剤については使った痕跡が検出されていない。販売目的があったり、第3者から預かっていたものではなく、所持する動機もない。疑わしきは被告人の利益にという点から無罪だ」

 弁護人の最終弁論が終わり、遠藤裁判長は「被告人3人前に。最後に言うことはありませんか」と尋ねた。

 宮丸被告は「強姦と未遂は自分で納得できない部分がある」、続いて眞野被告は「強姦をしてまで女性とセックスをするつもりはなかった」、最後に吉岡被告は「強姦をするつもりであれば、車は出していなかったし、強姦するつもりはなかった。覚醒剤の件も車を人に貸すことがあったのでやっていない」と述べた。

 裁判は結審し、判決は11月29日午前9時45分から言い渡される。

※検察官は眞野と性交した女性をAと呼んだが、弁護人は公判でこの女性をBとした。