2005年9月1日 読売新聞

性犯罪被害の治療費支援、避妊・中絶は全額…警察庁
 性犯罪が全国的に増えていることを受け、警察庁は来年度から、強姦(ごうかん)事件の被害者に、緊急避妊や中絶手術の費用などを全額支給する方針を固めた。

 性犯罪などで心的外傷後ストレス障害(PTSD)が残った場合にも治療費を負担する。性犯罪被害者の支援体制を経済的な面からも充実させることで、警察に訴えやすい環境を整備し、被害が表面化するケースは「氷山の一角」に過ぎないとも言われる性犯罪の実態把握を進める考えだ。

 強姦や強制わいせつなどの性犯罪は2000年以降急増。昨年は1万1360件と、年間5000件前後だった1990年代前半の2倍余りに上った。このうち強姦は2176件で、被害者が医療機関で診断を受けた場合、全国の警察が、自治体の予算から1人数千円程度を補助している。

 ただ、現行の犯罪被害給付金制度は、給付金の支給条件を「加療1か月以上で入院2週間以上の重傷病」に限定。性病の検査や緊急避妊の費用、中絶手術代などは、高額になっても被害者や家族が負担しているため、同庁は全額支給を決めた。PTSDを負った被害者には、犯罪被害給付金制度の支給条件から「入院2週間以上」の要件を削除、強姦だけでなく強制わいせつの場合でも、治療費の自己負担分を受給できるようにする。

 同庁は、支給額について性病検査が約2万円、緊急避妊が約5000円、中絶費用が約13万円と想定。母体保護法に基づく「暴行脅迫による中絶」が03年度で534件に上っていることなどから試算すると、国費と都道府県費を合わせ年間に約2億2000万円が必要とみている。